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宿痾
[日本の政治]
2016年12月13日 22時10分の記事

先日、何気なくテレビを観ていたら、『ザ・バッグマン 闇を運ぶ男』(2014年 米)という映画をやっていました。ロバート・デ・ニーロが演じる闇組織のボス・ドラグナが、凄腕の殺し屋・ジャックにボストン・バッグをあずかるように命じ、さらにそのバッグを指定したモーテルに運び、そこでドラグナが来るまで待てと命じます。そして、そのバッグの中は絶対に見てはいけないという条件をつけます。この映画のストーリーは、そのバッグをあずかるジャックに起こる様々なことを中心として展開していきます。

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さて、この映画のラストで、インテリ風のロバート・デ・ニーロが演じる闇組織のボス・ドラグナが以下のような台詞を言います。字幕に出ていたものです。

私は学問を続けたかった。
国際犯罪組織について学んだ。
私の修士論文は――“ヤクザと超国粋主義の右派政治との関係”。
教授が夢だった。

いきなり「私の修士論文は――“ヤクザと超国粋主義の右派政治との関係”」などという予期しない台詞が出てきたので驚きましたが、音声でははっきりと「Japan」と言っていて、明らかに日本について語っています。
この台詞を見て、よく知っているなと心から思いましたが、同時にこの「ヤクザと超国粋主義の右派政治との関係」は世界においては常識なのだなともはっきりと思いました。すなわち世界はそう日本を見ていると言うことです。
この「ヤクザと超国粋主義の右派政治との関係」というのは、実際には日本の近代(明治以降)からあるものです。実際、日本のギャンブルをたどれば必ずと言って良いほど右派政治との繋がりが見えてきます。日本の近代から戦後を通じてずっと存在する構造的な問題なのです。
日本の近代においては、アヘンというのは切っても切れないもので、それが台湾、満州と繋がっていきます。東アジアの近代において、アヘン戦争などロスチャイルド系が扱っていたアヘンというのは大きな問題です。日本はそのアヘンに呑み巻き込まれなかったわけではなく、そのロスチャイルド系からアヘン利権が日本に移っているわけです。それは、日本人が優秀だからではなく、そのロスチャイルド系にとって信頼できる手先であったという理由以外ではないと考えます。つまり、満州、台湾、アヘンと関わっている人々を見れば、必ずそれはロスチャイルド系に繋がると言うことなのです。それが大抵の場合、右派であるのです。これが国粋主義者の本当の顔です。
近代においては、そのアヘンによって資金調達し、私腹を肥やしていたわけで、それはヤクザと言ってもよいことですが、それを政府・軍レベルで行っていたわけです。一方でその資金を軍事資金として使ってきたわけで、これが日本の近代の戦争の構造そのものであるわけです。現在においては、ヤクザと薬物というセットで考えますが、むしろ最初は違うのです。そして、これが日本の宿痾なのです。
日本において近代から現在に至るまで、ずっとこの右派の宿痾があるわけです。日本のシンクタンクでさえ良く見ればその系譜が浮かび上がりますし、そこが打ち出す政策もその背景がよく見えてきます。
だからこそ、天皇陛下の生前退位の問題において、明らかに陛下のお気持ちと日本の右派が対立するということが生じるのはここに問題があるのです。この構造は実は戦前から続くものです。だからこそ様々な問題が生じ、最後は国が滅びるまでに至るのです。天皇陛下万歳と言っている人々が一番危ないのは、昔も今も全く変わりません。彼らの本心はそう思ってはいませんし、彼らにはその権威を利用すること以外の目的はないと考えます。
これが今、日本の右派が戦前に戻したい本当の理由と考えます。だから問題なのです。戦前を日本における構造的問題を抜きにして賛美することなどあり得ないことと考えます。まさに我田引水のレベルです。
このような戦前の構図や満州人脈などが韓国の問題などに繋がっていきます。
映画でたった1箇所だけ出てくる「ヤクザと超国粋主義の右派政治との関係」という台詞は、実はこれだけの背景があると言うことなのです。そして、この背景を含めて世界はそう日本を見ているということです。このカジノを推進する自民と維新の議員は、何が楽しいのか自分の額にその一派ですと烙印を自ら押すのですから、すごいことをするなと思います。その意味の重さがきっとわかっていないものと考えます。同時に彼らの背景が何かが一発でわかってしまう烙印と考えます。
共産党が面白い記事を出しています。これも良くこのことがわかる記事です。

「カジノ法案提出議員に資金 ギャンブル業者から691万円 献金やパーティー券」(2016年12月8日)

カジノは日本にとって何も寄与しない
良く見るとカジノ推進を言っている者がTPPに賛同している者であることがわかります。そもそもTPPは国家をなくし、市場統合して、一部の者の利益を拡大させるものです。それを推進する者には国家とか社会とか、また人々の生活の安寧などと言う観点はありません。だから米国で反対され、米国が脱退するということになるわけです。TPP推進論者は、TPPを反対する者を保護主義者と言いますが、日本はこれまで保護主義だったと自ら言っているようなもので何一つ正当性がありません。なぜ日本はこれまで貿易立国と言ってきたのかと。そして貿易立国だからTPPを推進するというのは論理の破綻でしかりません。
自国の状況がしっかりとし、整った上での自由貿易であってその逆ではないのですが、そういう道理は彼らにはありません。
TPPとはそういうもので、民主主義に基づく国家や社会、人々の安寧を損なうものですが、そのようなものを推進する人々がカジノを推進するのは非常にわかりやすいことです。国家や社会、人々の安寧を考えず、一部の者の利益に血眼になっている姿がそこには厳然としてあります。だからイベント屋経済政策になるのです。
社会基盤や経済基盤がしっかりしているからこそカジノのようなものがとりあえず成立するわけで、その逆ではありません。カジノが経済において推進力になるのなら、日本中の至る所にカジノを経済対策で造れば良いわけです。世界の貧困を根絶するためにカジノを貧困地帯や砂漠に作れば良いわけです。貧困はなくなり、世界の砂漠はラスベガスのように緑地化するということなのでしょう。
もちろん、そんなこれはないわけで、そんなことを世界で言ったら笑われるだけです。単に箱物をつくるという経済効果と、そこで働く少数の人間とそれを運営するものの利益、そして多少の税収ということでしょう。ただ、それは経済的には極めて限定的と言うことであって、経済を押し上げる本質などでは全くありません。そして、全体的に見れば、明らかにマイナスでしかないのです。
マカオやシンガポールのような都市国家を参考にして同じにする必要はそもそもありません。マカオやシンガポールとは国の成り立ちやつくりがそもそも違うものなのです。
このカジノの議論は、しっかりとした社会や経済基盤がある日本に単に寄生するという以外ではないでしょう。それは『宿痾』なのですから、当然の発想でしょう。しかし、その宿痾は戦前同様、日本を壊すことになるでしょう。

政治的なポイントになる
上記で、カジノを推進する人々は、自分のおでこに烙印を押すようなものと申し上げましたが、マスコミでもこれだけ反対をしている中で、推進をしたと言うことは、この推進した人たちにとっては大きな問題として残るでしょう。世論調査でも半数以上が反対をしているのですから、「ヤクザと超国粋主義の右派政治」が中心であった日本でも残っていたモラルが踏みにじられるものになります。
今後、経済がこれ以上少しでも悪くなれば、カジノを経済成長政策にするからだと言われるのは必至でしょう。そしてそれは首相をはじめカジノ推進に関わった人々の責任に明らかになります。安倍自民党政権下で行われることは、議員立法であろうと、そんなものは関係ありません。政権として出せないから、与党中心の議員立法にしたのでしょうが、それがこのカジノについての本質を逆に明らかにしています。このポイントは今後、相乗的に様々な問題へと発展していくことでしょう。日本の政治はいずれ変わります。

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◎ 拙著です

○ 『この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体』



内容は今まで見たことのない国際情勢と世界史の分析で、2024年の世界情勢の根本要因が書かれています。この本とザ・フナイの連載をトータルで読むと、ロシア・ウクライナ情勢、パレスチナ・イスラエル情勢及び中東情勢、東アジア情勢など現在の世界情勢の本質が見えてきます。もちろん、日本国内の情勢も見えてきます。内外情勢は決して別々ではない。
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プロフィール
片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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