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日本の関与?
[日本の政治]
2017年2月20日 8時32分の記事

2月13日にマレーシアで殺害されたとされる金正男氏の事件について、毎日新聞が以下のように良い記事を出しています。

「<金正男氏殺害>マレーシア警察、慎重姿勢 初の記者会見 」(2017年2月19日 毎日新聞)

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この記事は、マレーシア警察が2月19日に開いた事件後初となる記者会見についてです。実際の所、現地警察の公式発表ですから、はじめてとは少し驚きます。随分と日本のテレビは先走って報道・解説をしてきたのではないかとやはり思います。
記事では、マレーシア警察が、殺害された人物について、「死亡した人のパスポートの名義がキム・チョルだったとしか言えない」(同上)と発表し、金正男氏なのかという記者の確認には明確に答えていません。
つまり、現状、マレーシア警察の公式発表では金正男氏が暗殺されたとは言っていないということです。ということは、事件が発生してからのこの1週間、金正男氏が殺害されたということが正式に現地警察から発表されていないのに、ニュースや解説を日本のテレビは断定的に垂れ流して来たわけです。
どこにそのような確証があってそういう報道をしてきたのかと言うことに当然なります。なぜ、そんなに断定的に報道してきたのか、もしくは確証がないままそのような報道をしてきたのかということになります。究極的にはまだ本人が殺害されたかどうかは、公式発表では判別できないと言うことなのです。

一方で、ロシアのメディア・スプートニックが以下のように興味深い記事を出しています。

「マスコミ報道:金正男氏殺害容疑者 日本のTV番組収録と思い込む 」(2017年2月19日)

この記事では、インドネシア国籍で逮捕されたシティ・アイシャ容疑者ついて、同容疑者の親族がこれまで「日本のテレビ会社の娯楽番組の収録で稼いでいる」(同上)と述べていると報道しています。娯楽番組とは日本国内で放送されるいたずら番組で、今回逮捕されたTシャツ姿の写真が公開されているベトナム国籍の女性・ドアン・ティ・ヒュオン容疑者も今回の攻撃はいたずらと語っていると報道されています。
この記事でこのことを報じていると紹介されているマレーシアの新聞Star紙の記事は、以下のものです。

「Kim Jong-nam murder: Siti Aisyah's mum had bad feeling」(2017年2月19日 The Star)

この記事では、以下のように言われています。

According to ABC News, Benah's sister Mala also confirmed the story and said Siti Aisyah was involved in a Japanese TV production.(同上)

日本の「TV production」に巻き込まれたとアイシャ容疑者の親族が述べています。
一方で以下のようにも言われています。

But a friend who met her in Serang last month was told that Siti Aisyah would be in a movie being filmed in North Korea.(同上)

アイシャ容疑者が北朝鮮の映画に出るかもしれないと言っていたと言うことです。
同記事では、アイシャ容疑者がテレビ番組ということにだまされていたのではないかというインドネシア国家警察の見解を紹介する一方、同容疑者は3回から4回テレビ番組のためにいたずらのリハーサルをしていたとみられていると報じています。
この記事で、同容疑者の親族のコメントを紹介しているのは、もともとはオーストラリア国営放送(ABC)で、その記事は以下のものです。

「Kim Jong-nam: Indonesia says murder suspect 'may have thought she was on a reality TV show'」(2017年2月18日 ABC)

以下のように書かれています。

The woman's sister Mala said Ms Siti had also gone to Japan to film the prank television show.
"Like putting chilli into someone's hands, sort of prank jokes for a Japanese TV station," Mala said.
"She sent some money to us monthly, just enough to buy food, she worked in Batam in a female clothing shop."(同)

内容はほぼ上記スプートニックの内容と同じです。ただ、アイシャ容疑者はいたずら番組収録のため日本に行っていると書かれています。これらの記事では、日本のいたずら番組を作っているとされる組織は「TV sataion」、「TV production」と表現が違います。またはっきりと名前が言われているわけではありません。
これらの記事を見ると、アイシャ容疑者とヒュオン容疑者はいたずら番組のテレビ収録と思って犯行に及んでいる可能性は高いと言うことです。
しかし、ここで4つの可能性が出てきます。一つは、日本のテレビ関係者がアイシャ容疑者と接触があり、今回の殺害事件も同じような繋がりなのか、二つ目は日本のテレビ関係者とアイシャ容疑者と接触があり、今回は別なのか、3つ目は日本のテレビ関係者を装ったものがアイシャ容疑者と接触し、今回の事件もその関係なのか、もしくは日本のテレビ関係者は何らかの機関と関係があるのかという4つです。
普通に考えれば、3番目の可能性ですが、それがどの国、もしくはどの組織によるものなのかは未だ確定していないということです。北朝鮮が黒ということは多くの人が考えるでしょうが、今日現在では、それもまだはっきりとしないわけです。そして、上記の毎日新聞の記事を考えれば、金正男氏が殺害されたことも現状では不明と言うことです。これが本人でなければ、そこには全く違う背景の可能性があるわけで、本当の意味でのトリック、もしくはフェイクになります。しかし、それは現状では判別できないというのが実相です。

とは言え、先日の本ブログ「とても良い記事」(2017年2月16日)で紹介した、『日刊スポーツ』の「政界地獄耳」のコラム記事の内容を考えると上記の3番目の可能性ではない可能性も出てきます。このコラム記事では以下のように書かれていました。

日本の情報関係者は「あまりにも殺害方法、場所、理由などのディテールが事件当初から詳しく出すぎていることに強い違和感を感じる」といぶかる。
★続けて「今どき、毒殺という手口。強く北朝鮮犯行説を誘導しているのではないか。通常、暗殺であれば銃殺や爆殺だろう。まして空港で。またその報道が詳しく速報されたことからも意図的なものを感じる。もしくは『誰か見ていた』ということだろう」。政界関係者も「実行犯についての報道が速い。女性2人程度なら現場の監視カメラからの情報と推察できるが、1人逮捕の報道が15日に出たがベトナム人情報や既に2人が殺害されているという報道は日本政府関係者が一報だ。ちょっと出来過ぎだ」。(「『今どき毒殺』『意図的速報』…妄想広がる」2017年2月16日 日刊スポーツ)

まず、事件当初から事件のディテールが早く出過ぎているとありますが、この事件の最初の発表は韓国です。そして、日本のテレビも一斉に報道し、この1週間、不確実な根拠で報道と解説をしてきています。
手口が毒殺についての違和感は、上記のようないたずら番組の収録ということで、ふたりの女性容疑者がだまされていた可能性があります。
そして、『誰かが見ていた』ということ、そして実行犯についての報道が早く、日本政府関係者が第一報という『出来すぎ』ているという違和感を考えると、日本の関与と言うことが実は完全に否定できない状況になっているものと考えます。一体誰が見ていて、そしてなぜそんなに早く報道し、さらになぜその報道はマレーシア警察の発表とは異なりかなり断定的に行われているのかということで、さらに日本のテレビ局もしくは制作会社の関与と言う記事がでると、そこに日本の関与という可能性は当然出てきます。
このコラムで二人が殺害されているというニュースは以下のように報道されています。

日本の複数の政府関係者によると、金正男氏を殺害したとみられる女2人はすでに死亡しているという情報があるという。また、その女2人は別の工作員に殺害されたのではないかという情報も入っているという。「金正男氏を“殺害”女2人はすでに死亡か 」(2017年2月15日 日本テレビ)

これと同じニュースは日本テレビだけではなく、他でも報道されています。複数の日本政府関係者が上述した二人の女性容疑者が既に死亡しているという情報を非常に早い段階で流しているわけです。なぜ、そのような情報を流したのか? 上記コラムのように非常に違和感を覚えるのは自然でしょう。

もちろん、これは私の推測ですし、同時に可能性のお話しです。ただ、現状はその可能性を排除できないと言うことなのです。この殺害事件において日本という要素は現状、排除できません。
テレビから怒濤のごとく出てくる情報については、常に反対に考える、もしくは疑って考える必要はあると考えます。現状は特にそうです。全てのマスメディアの情報がそうだとは言いませんが、そのような眼を持つ必要があります。それは本ブログ「とても良い記事」(2017年2月16日)で書いた東アジアの実相があるからです。マスメディアというのは、ジャーナリズム精神を持った組織、もしくは逆に政権に媚びているジャーナリズム精神を失った組織という前に、れっきとした情報を扱う情報機関であることは忘れるべきではないことと考えます。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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