大阪は迷走す ? | |
[日本の政治] | |
2020年11月1日 17時0分の記事 | |
いわゆる大阪都構想問題。このことを聞く度に二つのことを考えます。 (※ 本記事は掲載から1週間が経つと有料記事になります)
一つは、大阪は自分のプライドだけでしかものを考えていないと言うことです。この都構想という構想が、持ち上がるその根底にあるものは、大阪のプライドだけです。したがって、そこには日本全体のプランもなければ、大阪周辺地域への大阪の貢献という観点も基本的にはないと考えます。だから、大阪をもっと上にしたいだけの『都構想』なのです。このネーミング自体が自分のことしか考えていない証拠です。 経済規模で言えば大阪府は愛知県や神奈川県と同規模、東京都の4割弱です。人口にしても神奈川県より少なくて愛知県よりは多い3位。そもそも大阪府は都構想と言えるレベルではありません。 ただ、プライドだけは『都』並で、それを満たすことにすべての起点があると考えます。ですから、日本全体の視点もなければ、大阪府周辺への貢献という観点もないわけです。そして、ここに大阪がその力を発揮できない本当の理由があります。 大阪にあるのは、ただただ、とても大きなプライドを満たすだけのこと。謂わば、巨人阪神戦を伝統の一戦と呼ぶ感覚と同じで、巨人と比べれば過去の実績は雲泥の差であるのに、それを度外視して互角にして伝統の一戦と言ってしまう感覚とこの都構想の感覚は同じなのです。大阪には大阪のプライドしか見えていないわけです。セリーグの優勝回数で言えば、伝統の一戦とは巨人対中日とか、巨人対広島なのです。 このような大阪の『視線』は、日本で大阪だけのように思います。そして、それが大阪のアキレス腱なのです。自分のことしか観ていないし、故に自分のことをしっかりと観てもいないのです。常に見ているものはプライドであり、それを満たす上の存在なのです。大阪はとても好きな街で、人々もとても好きですが、やはり本当のことは言わなくてはなりません。 都構想はおまじない そして、このことと関連して、都構想と聞く度に思うことのもう一つは、制度を変えれば、物事が一新するという幻想にとりつかれていると言うことです。これは横着と言えます。このような発想は、おまじないと一緒なので、結果、思考停止、思考しないとなり、基本的に伸びる要素はなくなるのです。 そもそもおまじないですから、どんなに唱えても成長していくことはないのです。おまじないを唱えていれば、自分ではやってるつもりになり、充実感や夢想が楽しめるかもしれませんが、思考がないので、当然、実質的な発展はしないわけです。 このような思考は、当然、物事の本質を見失わせます。そして、見失わせることによって誰かが得をするものが作られるということは、政治の世界や歴史上、良くあることです。これをやれば必ず上手くいく、これをやれば、あなたの本来の力を開花させ、相応しい地位を築けるはずですと吹聴して、その吹聴したことだけに焦点をしぼらせて、あとのことは不問に付すように仕向ければ、当然、よいように利用できるわけです。 そして、大抵の場合、このような吹聴は、上手くいっていない人になされるわけです。飛びつくからです。良いカモなのです。そして、吹聴された方は、当然、さらに悪くなります。なぜなら、その言われたことを実現することだけが問題となり、現実的な思考ができなくなるからです。古今東西、革命やファシズムで社会が崩壊しダメになるのは、この現実的な思考ができなくなるからです。そして、この思考は亡びるまで続くのです。それは、言われたことを実現することが目的のすべてになるからです。言われたことを実現することが、栄光に到達することになるからと思い込んでいるからです。 大阪はそもそも上手くいっていません。大阪の歴史的な基盤から考えれば、愛知県や神奈川県と同レベルというのは、明らかに上手くいっていない証拠なのです。このような場合、大体が大阪のリーダー層に根本的な原因があるのです。 それに、都構想という発想自体が貧弱なのです。東京・名古屋と連携して、さらに大きな動きを作って行くという発想ではなく、大阪の都構想という自分だけの貧弱なレベルになっているわけです。本当に発想の貧困を感じます。これではダメです。このような発想をしているリーダー層を変えないと大阪は上手くいかないでしょう。 ですので、逆に反面教師として得られる生産的な発想は、東京などは北海道(札幌)、中部地方(名古屋)、近畿地方、九州地方(福岡・博多)と連携して東アジアでの新しい地位と価値を創造していくと考えれば良いわけです。大阪はこれから伸びませんから、気がつくまで放っておけば良いのです。大阪は自分のことしか考えていないのです。 典型的な事例 この都構想は、そもそもが大阪府と大阪市の二重行政を排除して、ムダをなくすというものでした。しかし、以下の記事のように都構想が実現するとコストが増えるわけです。このことは、まさに自分のプライドを満たすための現実感のない発想の結果、蓋を開けたらとんでもないものだったということの典型例です。 「大阪市4分割ならコスト218億円増 都構想実現で特別区の収支悪化も 市試算」(2020年10月26日 毎日新聞) 火のない所に煙は立たない。このような試算が曲がりなりにも記事となるのは、それなりの根拠があるからでしょう。試算を出す方、伝える方の双方の人生がかかりますから、いい加減なものは出しません。大阪市、大阪府とも首長は都構想を進める維新ですから、その維新にとってとても都合が悪いこの試算を出したことで、当然、報復が予想されます。したがって、この試算を出した大阪市財政局の担当者は非常に勇気と義心がある方と率直に思います。 政界で仕事をした経験から言えば、まったくデタラメなものは普通出せません。そのようなものを出しても、いずれその本質は明らかになってしまいますし、逆効果になることもあるからです。 むしろ、この試算について都構想推進側が否定しても、仮に都構想が賛成多数となっても、この試算について正当性が出てくれば、当然、推進側の命取りになります。そして、これからはごまかしがないかと都構想推進側が徹底的に調べられます。そして、当然、逆に都構想を反故にする新たな住民投票の可能性が浮上していくことになるわけです。 この試算については、以下のリテラの記事がよくまとめています。 「大阪市4分割でコスト218億円増”は捏造でも誤報でもない! 松井市長が市財政局長を恫喝し都合の悪いデータ封じ込め」(2020年10月31日 リテラ) このリテラの記事には、この試算を公表したのは大阪市財政局の東山潔局長と記載されています。大変に勇気と義心がある方です。その東山局長が、以下のようにこの試算について、記者会見を開き、次のように述べています。 東山局長は29日夕、市役所で緊急の記者会見を開き、こう説明した。 「本日、(松井)市長に考え方を説明し、市長から『世の中には存在しない架空の数字を提供することはいわば捏造だ。資料を提供した財政局のガバナンスの問題だ』と厳重な注意を受けた。(今回の試算は)いわば虚偽のもので実際はありえないものだという認識に、市長に説明したなかで至った。報道各社や市民に誠に申し訳なく、深くおわび申し上げる」 「大阪市4分割でコスト218億円増”は捏造でも誤報でもない! 松井市長が市財政局長を恫喝し都合の悪いデータ封じ込め」(2020年10月31日 リテラ) この記述についてのポイントは二つで、まず大阪市長の松井氏が大阪市財政局のガバナンスを問題にしていますが、そもそもこの問題は大阪市長の松井氏のガバナンスの問題であることです。この都構想とやらを進めるのに、住民にまったく漏れのない緻密な情報を提供していなかったからこそ、このような問題が起きるわけです。そして、このことの検証はこれから数年掛けて行われることであるわけです。 そして、もう一つは「(今回の試算は)いわば虚偽のもので実際はありえないものだという認識に、市長に説明したなかで至った」という発言です。東山局長は「認識」に至ったと言っているわけですが、これは単に東山局長の認識であるわけです。東山局長もこの「認識」という言葉を明らかに意識的に使っていると思いますが、この試算の問題は、東山局長の問題なのではなく、住民の問題なのです。東山局長がいかように述べても、住民が検証して、その試算に妥当性があれば、それは、都構想推進側の虚偽、詐欺、ねつ造というポイントを浮上させるのです。ですので、東山局長は「認識」という東山局長個人の問題に敢えてしたのだと考えます。 だから、実は上記の東山局長の記者会見でこの試算について決着がついたわけではないのです。むしろ、これからの問題となったのです。そこが明らかなポイントです。 「大阪は迷走す ?」(2020年11月2日)へ続く。 | |
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