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アベノミクスの失敗を認める
[日本の政治]
2016年7月12日 2時4分の記事

安倍首相が経済対策を指示すると報道されています。アベノミクスは金融緩和や積極財政政策というマクロ経済政策を行っていることになっていますので、政策実施から既に3年半を経過した現在、当然のごとく結果が出ていしかるべきことです。マクロ経済政策は効果が出るのに2年、3年と時間がかかるわけですから、第二次安倍政権が発足した直後から株価などが上がったのは、必然的にアベノミクスという長期政策のためではありません。自民党、民進党と続いてきたデフレ政策からの転換と言うことが引き金となった一種のバブルのようなものなのです。

「安倍首相、12日に経済対策指示へ 財投の積極活用も」(2016年7月11日 ロイター)

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バブルであったから、経済として定着していないわけで、現状のように消費が落ち込み、設備投資などが落ち込み、給与所得は全く増えません。これがアベノミクスなるものの成果なのですが、それを加速することに参議院選挙で信任を得たと、経済対策をするというのは、現実と言っていることが明らかに矛盾しています。何を加速させようというのでしょうか? そんな失敗政策を加速しては大変なことになります。
そもそも、これまでの安倍政権の経済に対する言動を追ってくれば、現状、経済対策など打つ必要がないほど日本の経済は良いはずです。しかし、経済対策をやるというのは、アベノミクスが信任されたからではなく、経済が良くないからです。現在の日本は経済対策をしなくてはならないほど悪いのかといえば、間違いなく悪く、そして経済対策をやる理由は確実に間違いなくあります。しかし、それはリーマンショック級の経済クラッシュがあったからではなく、本ブログでこれまで指摘してきたように安倍政権が内需政策を完全に失敗しているからです。そして、そのことを安倍政権が認めてこなかったからです。
1年前、半年前、三ヶ月前、そしてついこの前まで経済は堅調と安倍政権は述べ、アベノミクスの宴は堅実で経済は順調と述べています。そして、伊勢志摩サミットではリーマンショック級の経済クラッシュがあると政権がメッセージを発して大きな問題と嘲笑の的になりましたが、ふたを開ければ、リーマンショック級の経済クラッシュに直面しているのは日本だけです。1年前から株価は30%近く落ちています。そして消費は一向に回復せず、家計は逼迫の度を深め、可処分所得は減り続けています。これで新たな雇用が生まれましたと言っているのですから、その雇用はどんなものか想像は容易にできますし、明らかに労働環境は悪化の一途をたどっています。
これまでも内需政策をしてきたはずだから 経済対策をやる必要など論理的にはあり得ないわけです。もう既にアベノミクスの果実を国民が享受していなくてはならないのですが、そのようなはっきりしたものは、実はなにもないのです。第二次安倍政権が発足したときのバブルが記憶に残っているだけで、現状の問題点を考えていないものと考えます。それは安倍政権の経済に対するあまりにも良い評価が、まさにそのことを物語っています。
異次元の金融緩和をして、積極財政策をして、まだ道半ばというのはあり得ないはずです。そこには確実に現状の失敗に導いた安倍政権の経済政策運営の大問題があります。そのことはこれまで何度も、本ブログで指摘してきました。
安倍政権にしっかりとした経済ビジョンがあるかと言えば、本当は何もないでしょう。巷に出ている論点をつまみ食いしているだけで、本質的な経済ビジョンはないものと考えます。恐らく、安倍政権には経済政策をつくり出す力がないのだろうと考えます。そして様々にある安倍政権の経済政策運営の失敗のうち、このことが第一で最大の問題点でしょう。したがって、これからアベノミクスを加速させれば、確実に構造的な問題点は拡大し、それは今後の日本の政治状況を劇的に変えるでしょう。
上記記事では、経済政策で内需に焦点を絞るとどこかで聞いたことが言われていますが、農産物は輸出対応型と明らかに外需依存を宣言しています。同時に、世界経済の安定化に協調を進めると言っていますが、これも外需についてです。明らかにめちゃくちゃな論理展開です。今日において、世界においては、安定化をしっかりと考えなくてはいけないのは、そもそもその日本の方ではないかと考えているものと考えます。
財投に関しても、このことを持ち出すのは良いことです。未来への投資というのも良い言葉です。しかし、これまでの3年間で積極財政政策を行ってきた成果はほとんどないでしょう。未来の成長に繋がる投資も良い言葉ですが、それでは、未来の成長に繋がる投資を安倍政権は判断できるのかというそもそも論があります。その基準は何か? そのようなものはあるのでしょうか? 未来を見通す力が政権にあるとは思えません。
このような危うい投資は当たり前のように「利権」に繋がります。今の日本には、オリンピック利権、カジノ利権と様々な利権がありますが、このような美辞麗句に修飾された中身が無い投資は、簡単に利権になる可能性があります。今回の発表はその可能性が強いものと考えます。
財投を含めた積極財政政策は、容易に利権の温床になります。そして、同時に軍事予算の増加に繋がります。このような陥穽を意識し、乗り越え、しっかりとした経済基盤をつくらなくてはならないのですが、安倍政権は負の側面に配慮を払いませんし、また認識もしていません。極めて一面的な思考であるのですが、それが今回も感じられます。しかし、財投や積極財政政策で使われるお金は国民のお金ですから、利権などに使われるのはもっての他でしょう。
財投は必要と考えますし、積極財政も必要と考えますが、このような負の側面をしっかりと踏まえた上でないと何の意味もないどころか、害にしかなりません。その負の側面に対して認識が安倍政権にはあきらかにないと考えます。
現状、安倍政権の経済政策の失敗により、内需に大きな穴が開いています。したがって野党は、日本の経済において、この内需に焦点を合わせた政策を作り上げていくのが何よりでしょう。つまり、安倍政権の経済政策の失敗により、内需政策にかなりの伸びしろがあると言うことです。ここを中心にした政策と掘り起こしをしていくと相当に良いものができるものと考えます。その上で外需に関して考えるべきで、それは日本における内需、外需の比率からしても当然のことであるのです。この内需政策の掘り起こしは、考えれば、まだまだありますし、可能性は非常に大きいものと考えます。未来への投資で一番確実なのは、今を生きる人の生活を安定させ、豊かにすることしかないのです。国の基盤は人にあるのです。この真理は古今東西、変わることがありません。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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