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そもそも道徳観がない?
[日本の政治]
2017年2月26日 23時57分の記事

昨日の本ブログ「そもそも道徳観がない?」(2017年2月25日)の続きです。

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教育勅語には徳目が書かれています。それは親を大切にし、兄弟仲良く、夫婦円満に、友達を信頼するなどですが、とても良いことだと思います。しかし、これはどこの国に行っても大抵は同じことを大事にしています。ある意味、当たり前のことで、四季が日本独自のものでないのと同じように、日本独自のものではありません。
親孝行するという『孝』という字が漢字であるのですから、そもそも『孝』の概念は中国にもあると言うことです。教育勅語は漢字が非常に多く使われていますから、そういう意味で、そもそもそこに書かれているものが日本的なものと考えるのは間違いです。また、徳目を日本風にまとめたものとも言える内容でもありません。
世界において当たり前のことですから、教育勅語にあるように「之ヲ中外ニ施シテ悖ラス」(教育勅語を国内外に施しても道理からはずれない)というように、どこでも共通していることなのです。
約130年前に出された教育勅語は、西洋化、近代国家建設のために作られたと考える方が妥当です。実際、そういう時代ですし、その必要があったわけです。大日本帝国を作るために必要な思想教育の最初が、この教育勅語であって、むしろその本質は近代化なのです。だから、この教育勅語をもって日本的と考える方がおかしいのであり、明らかに既に時代遅れになっているものなのです。130年前の近代化のための施策なのです。そして、それは国家神道となり、最後は破綻するのです。

今の時代に適切な教育と言うことを、伝統を考えて考え出すのが、今の時代に必要なことです。皇太子殿下もそうおっしゃっていました(本ブログ「皇太子殿下のお誕生日に際し、心からお慶びを申し上げます」(2017年2月23日))。130年前より現在の方が様々な歴史的知識、情報、様々な知識がありますから、そういうことを踏まえ、現在と将来を見据えていかなくてはならないわけです。伝統は否定しませんが、復古主義は単なる思考停止の、思考の怠慢でしかありません。

しかし、教育勅語の以下の部分は明らかにおかしなものです。

一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ 以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ

意味は、『危急の事態があれば義勇心をもって公に奉仕し、それによって永遠に続く皇室の運命を助けるようにしなさい』ということです。これは国民主権、民主主義の国においては明らかに、その根幹が違うものです。だからこそ、今上陛下がずっとお考えになられてきた象徴としての天皇というものがあるのです。皇太子殿下はその今上陛下に倣ってと先日、おっしゃっていました(本ブログ「皇太子殿下のお誕生日に際し、心からお慶びを申し上げます」(2017年2月23日))。私はそれは大変素晴らしいことだと思っています。
危急の事態とは、戦争だけではなく、自然災害も含まれるでしょう。しかし、教育勅語をいただいた近代日本は、数々の戦争を起こし1945年に敗戦という形で滅びました。『皇運(こううん)ヲ扶翼(ふよく)スヘシ』(皇室の運命を助けるようにしなさい)と子どもの時からたたき込まれ、愛国が連呼され、皇運を扶翼するために多くの人々が戦争に動員され、犠牲になりました。そして、そのことによって日本だけではなく、他国の多くの人々が犠牲になりました。
1945年に日本が敗戦し、一度、破滅をしたのは、それまでの『臣民』の扶翼が足りなかったのではなく、当時の為政者の明らかな間違い・失敗・能力不足だと考えています。もちろん、当時の臣民も扇動され、また自発的に戦争の機運を醸成したのも事実です。
為政者(指導者)の能力や判断、国民への誠実さ、そして資質というのが、政治や社会において非常に大きな意味を持ちます。国・社会において最も重要なのは、この為政者の徳・能力・資質であり、教育勅語のように人々を『皇運ヲ扶翼スヘシ』と縛ることではありません。
しかし、実際、戦前・戦中における軍部、特に指導部は暴走し、一方で驕慢と退廃、その作戦・管理は杜撰そのもので、一般の人々はそれに巻き込まれ、敵に体当たりまでして、その尊い命を捧げたわけです。先の大戦にいたる時期において、昭和天皇は慎重なお考えを示されていたにもかかわらず、その御意志は顧みられるどころか、226事件ではクーデターの策謀まで起きています。また、満州ではアヘンが利権化し、莫大な富を築いた政治指導者がいました。そこには明らかに欺瞞に満ちた近代の日本の姿があり、そういう中に教育勅語、国家神道というものがあるものと考えます。その近代日本の指導者は哲学も能力も倫理観もなく、日本を破滅へと向かわせたわけです。これが教育勅語をいただいた日本の結末であったわけです。
これが復古主義を唱える人々の世界なのです。そもそもそういうものを疑問もなく、教育勅語をただただ賞賛しているというのは、単純に歴史観がない、思考停止に等しいものと考えます。そういうものを思考がなく『丸覚え』することのどこに問題あるのかと言ってしまう稲田防衛大臣は非常に問題があると考えます。即刻辞任すべきでしょう。これは憲法違反の問題でもあります。
今を生きる人間は常に考えていかなくてはいけないのです。伝統をかえりみるのは、新しきを知るためにあるのです。丸覚えして、立派に暗唱することを良しとするのは、何も考えないということと同義であり、その本質は人をコントロールすることにあります。教育勅語をちゃんと読めば、『皇運ヲ扶翼スヘシ』が憲法に違反しているものであることはすぐにわかります。それを丸覚えしろというのは、明らかに現憲法を無視することであり、閣僚としての資格がないことを明らかに意味します。教育勅語に対する知見は籠池氏と同じレベルのなのかと思ってしまします。教育勅語には憲法を守り、法律を守れとありますが、そのことに抵触しているのではありませんか? 今上陛下がご即位の後、おっしゃった国民とともに守る憲法((宮内庁))も、稲田氏にしたら、憲法でもなく法律でもないと言うことなのでしょう。そうでなくては教育勅語の丸覚えに理解を示す言葉は出てきません。しかし、それはやはり閣僚として資格がないと明らかに示しているのです。

「稲田氏、教育勅語の丸覚えに理解示す 森友学園の幼稚園」(2017年2月23日 朝日新聞)

今の日本の政治の本質は、思考停止、欺瞞、そして歴史観と道徳観、倫理観の欠如なのです。

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片桐 勇治(かたぎり ゆうじ)プロフィール
1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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