日本政府が北極観測船建造を計画――北極海ルート視野 | |
[日本の政治] | |
2015年11月15日 3時17分の記事 | |
政府が初めての北極観測船を建造して、早ければ平成32年にも就航させる方針であることが、11月13日、判明したと産経新聞が伝えています。本ブログ「評価すべき野田聖子議員の南沙問題についての発言」(2015年11月7日)の「ロシアファクターを読み誤り窮地に陥る日本」で北極海ルートについて言及しましたが、政府がやっと動き出した感があります。この北極海ルートについては、2012年から私は様々なところで申し上げてきましたが、昨年の4月以降、ロシアとの関係が悪化したことにより、情勢は一挙に後退していました。このことは、同時に日本が地政学的に難しい状況に自ら入り込んだことを意味しますが、今回の報道はその打開策になるでしょうか。 「北極海航路参画へ国家プロジェクト 初の観測船32年にも就航」(2015年11月14日 産経新聞)
北極海や北極海ルートを日本の国益に資する形にするには以下の3つの絶対条件をクリアする必要があります。 ?米露の対立を解消すること ?ロシアとの関係をドラスティックに改善すること ?北方4島の問題を解決すること 米露の対立を解消しない限り、北太平洋を航路とする北極海ルートは成立しません。この海域の安定は絶対条件で、これは日米露の安全保障にも非常に役立ちます。 また、ロシア近海を通る北極海ルートを可能とするのは、ロシアと関係が良好であるという条件が必須です。そして、北極海から北太平洋に出てきて、最初の経済圏は北海道・北方四島となります。したがって、このことにおいてもロシアとの関係は必然的に意味を非常に持ちます。 このように国家の方針を左右するのが、北極海ルートで、単なる交易路として考えるようなものではなく、様々な問題をクリアしない限り実現化しないものです。産経新聞の記事を読む限り、まだ単なる交易ルートという認識レベルであると思います。 2012年からこの北極海ルートなどについては様々なところで申し上げてきています。大きな可能性を秘めた方向性で、実現に平成32年などというような時間を要しない状況でもあります。そして、様々なところでこのことを実現させようとする動きもあります。ただ、昨年4月から、ウクライナ情勢を発端として極めて大きな後退を余儀なくされています。このことで、実現は1年、2年どころではなく、10年、20年単位で後退したものと考えます。 当然、その要因は米露関係にありますが、政権がこの北極海ルートを実現するには、米露関係を解決する外交力が必須になります。その能力が現在の政権にあるかどうかが問われているのです。安部首相の外遊頻度は歴代首相の中で一番と言われ、外遊先で経済関係構築ということがよく報道されていますが、その一方で、その成果はあまり見えないという意見もあります。恐らく、この北極海ルートを実現するには、これまでの外遊レベルではなく、本当の意味での外交力が問われていると思います。 そして、上記3つの条件をクリアするとともに、中国との関係を悪化させないことも極めて重要でしょう。 可能性はさらに大きく広がる 産経新聞の記事には、「商船三井が昨年、ロシア北部で生産される液化天然ガス(LNG)を、30年から北極海航路を経由して欧州や東アジアに定期輸送すると発表している」(2015年11月14日 産経新聞)とあります。報道があまりされていないだけで、想像以上にロシアとの経済関係は進んでいます。 そして、この北極海ルートについても、産経新聞の記事の記事にもあるように日本での寄港地が横浜などというのではなく、もっとドラスティックに場所を考えてもよいでしょう。上記のように北海道はその一番の条件があるところですが、北極海航路の太平洋側の玄関口というだけではなく、米国からの物流ルートの玄関口にも北海道はなります。その立地条件は是非とも活用すべきで、日本にまたとないチャンスを与えるはずです。そのためにも上記の3つの条件クリアは必須になります。 また、この北極海ルートが欧州への物流ルートなら、これとセットでシベリア鉄道も考えなくてはなりません。そういう構想力がこのお話には必要です。シベリア鉄道は、中央アジアとの関係をつなぎますし、黒海、東欧へとつながる道にもなります。そういうユーラシア全体を考えた構想をしなくては日本にとってプラスにはなりません。 米国共和党系のタカ派の言うとおりにやり、その視点で中国のことを見て動いているようでは、日本に資する次世代の構想など描けないでしょう。この産経新聞の記事を見ても、まだまだ単なる呼び声だけというレベルで、絵に描いた餅になるように思います。したがって、昨年4月以降、日本が自ら入り込んだ難しい地政学的な状況を変えるものにはならないと、現状、判断します。 | |
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