アイデンティティを失う政治 | |
[日本の政治] | |
2015年12月27日 23時56分の記事 | |
昨日、本ブログ「大使館に農産物輸出担当官設置」(2015年12月26日)で書きました、海外の日本大使館に農産物輸出担当官を置いて輸出を促進させるという施策についてですが、このようなことをすると大きな悪い影響をもたらすもう一つの隠れたポイントがあります。
このような施策を行うと海外で売れるものを生産した方が利益が上がるので、次第に日本における農業生産は、日本国内ではなく、海外の事情に合わせた状態になっていきます。ある企業において、日本の市場ではなく海外の市場をターゲットにしていくという判断は当然、あってしかるべきでしょう。 しかし、農業は国民の生存に直結するものであり、それは国家の浮沈に直結します。農業生産の基盤が盤石で余剰物を海外のマーケット、市場の原理に乗せるのなら問題はありませんが、基盤が脆弱で、さらにTPPで非常に大きな影響を被る中で、農業が海外マーケットをターゲットにすると日本の農業生産は国民にとって極めて深刻な状態に当然、なります。例えば、日本で生産されるものは海外の一部で売れるものに特化され、一方で日本の国民向けの農業生産物は海外でなされるという状況が生まれることは当然、想定されます。 このような状態で、国際社会や地球的な問題が生じた場合、国民の生存と国家の立場は非常に危ういものになります。そのような問題があった場合、一企業のことであれば、その企業の問題で片付きますが、農業の性格上、国民全体、国家全体の問題となっていきます。だから、そもそも農業は市場原理で割り切れるものではないのです。それを市場原理に委ねれば、国民・国家の命運は市場や企業に握られることになります。 高付加価値の農産物というのは、コストもかかるでしょうし、さまざまな手間やエネルギーも必要でしょう。このような生産物はリスクに弱いですし、食料消費の一部を担うもので、人々の「食」と言うことに関しては本質ではない、非常に限定されたものです。 日本大使館に農産物輸出担当官を設置して、農産物輸出がうまくいったということが言われるかもしれませんが、それは非常に限定的なことで、裏腹に日本の国民の「食」ということにおいては本質ではない基盤が脆弱なものになっていきます。それが海外のマーケットをターゲットにすることにより、偏りは一層激しくなりますし、また日本としてのアイデンティティも失っていきます。 クールジャパン 実は、この発想はクールジャパンにもあります。クールジャパンというのは、そのクールさの基準は実は日本ではなく海外にあります。なぜなら海外でクールと思われることがポイントだからです。このような構図は、実は自分たちの価値観を海外の人に渡すと言うことで、一番、アイデンティティを失う結果を招くことになります。本当は日本人にとっては「クール」ではないのです。日本人が自らクールと考えていることがうまくいき、社会を活性化させていることを、海外が評価するなら良いですが、海外にクールと思われることが目的として先行すれば、当然、自らの足場や基盤が崩れていきます。それは、必然、社会の衰退を招きます。クールジャパンとして言われていることは、日本ではそれほど本質的ではないものもあり、それがこのスローガンによってかなり大きな存在感を示しているのではないかと思います。そして、その方向性が進行すると日本の本質的な基盤が崩れていくと言うことは当然あるでしょう。 このクールジャパンは、グローバルスタンダードという世界の基準に合わせるということで、自らの足場や基盤を失うことと、最終的に同じ結果を招きます。一種、新種のグローバルスタンダードというものでしょうし、この構造は上記の農業輸出と同じ構図なのです。そして、このことが、「保守」と名乗る現政権によって行われているのは皮肉としか言い様がないでしょう。むしろ、現政権だからそうするのではないかと考えていますし、実は、本質的に「保守」ではないと考えますが、歴代内閣の中で一番、日本のアイデンティティということを考えていないのが、現政権なのだと考えます。 | |
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