パレスチナ・イスラエル情勢についていかに考えるか その14 | ||||||
[日本の政治] | ||||||
2023年11月3日 23時35分の記事 | ||||||
本ブログ『パレスチナ・イスラエル情勢についていかに考えるか その13』(2023年11月2日)の続きです。
以下の10月26日にブルームバーグが配信したパレスチナ・イスラエル情勢とそれを取り巻く国際的な状況について書かれた記事はとても良いものでした。 ・ 『イスラエル支持の機運後退、ガザ空爆激化への怒り強まる 』(2023年10月26日 ブルームバーグ) この記事は、以下のようにパレスチナ・イスラエル情勢について、ヨルダンのラニア王妃のCNNのインタビューでのコメントを取り上げることから始まります。
ラニア王妃の「銃を突きつけて家族全員を殺すのはいけないことだが、砲撃して殺すのは構わないというのだろうか」という言葉はその通りでしょう。パレスチナのハマスは武装組織ですが、軍事組織と呼べるものではなく、その実態はゲリラに近い武装レベルと言うべきものと考えます。そのような武装組織が10月7日からイスラエルに対して攻撃をして、多数のイスラエル人を殺害し、外国人も含めて人質をとったわけです。無論、このことはとても悪いことです。 しかし、そのハマス、パレスチナ側の動きは、突如生じたわけではなく、10月7日以前にイスラエル側からパレスチナに対して行なわれたほぼ一方的な虐殺に起因するリアクションであると、本ブログ『パレスチナ・イスラエル情勢についていかに考えるか その4 』(2023年10月22日)などで指摘してきました。 ですので、10月7日前の数ヶ月間におけるサウジアラビアのアラブニュースの記事を観ると、以下のようにすでに中東諸国もイスラエルの行為に対しては批判的になっていることがわかります。そして、同時にサウジやGCCがパレスチナ国家樹立への支持を表明しています。このことは非常にポイントと考えます。 ・ 『サウジ外相、中東和平にはパレスチナ独立国家樹立が不可欠と発言 』(2023年9月19日 アラブニュース) ・ 『GCC、パレスチナ国家樹立への支持を表明、イスラエルのアル・アクサモスクへの侵入を非難 』(2023年9月8日 アラブニュース) ・ 『エルシーシ大統領、パレスチナ人を支援するエジプトの揺るぎない姿勢を改めて表明 』(2023年8月1日 アラブニュース) ・ 『OIC事務局長、イスラエルによるパレスチナ人への犯罪行為を非難 』(2023年5月26日 アラブニュース) ・ 『パレスチナ人が完全な権利を手にした時に初めて、中東に平和が訪れる=アッバース大統領 』(2023年9月22日 アラブニュース) ※ GCC=湾岸協力理事会(サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、オマーン、カタール、クウェート) ※ OIC=イスラム協力機構(エジプト、サウジアラビア、イラン、イラク、パレスチナ、ヨルダン、アラブ首長国連邦、オマーン、パキスタン、カタール、タジキスタン、トルコ、トルクメニスタン、ウズベキスタン、イエメン、アフガニスタン、バーレーン、バングラデシュ、ブルネイ、インドネシア、カザフスタン、クェート、キルギスタン、レバノン、マレーシアなど) 上掲したブルームバーグの記事は『イスラエルと他の中東諸国などがこの紛争をどうとらえているかで分断が深まっていることを浮き彫りにするものだ』と中東諸国などとイスラエルの分断を言っていますが、上記のアラブニュースのパレスチナ・イスラエルについての記事を観れば、中東諸国は10月7日以前の段階において、すでにイスラエルに対して批判的になっていて、さらにパレスチナ国家の樹立を言っていることがはっきりとわかります。 パレスチナ国家の樹立と言うことを中東諸国、イスラム諸国が主張しているにもかかわらず、イスラエルの姿勢は、『ネタニヤフ首相、パレスチナ国家建国阻止を呼びかけ、怒りと非難を巻き起こす 』と以下のアラブニュースの記事が伝えるように明らかなのです。イスラエルはパレスチナ国家は絶対に認めないと言うことです。しかし、すでに世界138ヵ国がパレスチナを国家として承認しています(2019年時点)。 ・ 『ネタニヤフ首相、パレスチナ国家建国阻止を呼びかけ、怒りと非難を巻き起こす 』(2023年6月27日 アラブニュース) そのようなイスラエルは以下の記事のように、10月7日以降、テロ拠点としてガザ地区の1万1000カ所を攻撃してきたと報じられています。記事には1日に440箇所あまり攻撃をしてきたとあります。そして、多くの民間人が犠牲になっているわけです。 ・ 『イスラエル軍、ガザでテロ拠点1万1000カ所を攻撃と発表 』(2023年11月1日 CNN) さらに、これだけの空爆をしていれば、避難しているパレスチナ人の帰る家はありません。本ブログ『パレスチナ・イスラエル情勢についていかに考えるか その13 』(2023年11月2日)などで取り上げたように、イスラエルがパレスチナ人にガザ北部から避難せよと言っているにも関わらず、パレスチナ人はその避難の途中、そして避難先でもイスラエルの空爆にさらされているのです。 しかし、そのパレスチナはイスラエルに対抗できる軍事力を持っているわけではありません。パレスチナ空軍がイスラエル空軍と激突したということは聞きません。なぜなら、パレスチナ空軍なんてものは存在しないからです。 ですので、ひとたびイスラエルがパレスチナに対して軍事力を行使すれば、それはほぼ一方的な軍事的攻撃になるのです。そして、大方のパレスチナ人はほとんど無防備な民間人ですから、イスラエルがその人々に対して圧倒的な軍事力をもって攻撃することは、『戦争ではなく、虐殺』なのです。 実際、無防備なパレスチナの難民キャンプは当然のごとくイスラエルによって攻撃され、パレスチナの子どもは3週間で3千人以上、イスラエルによって虐殺されているわけです。普通に大虐殺です。私にはそのようにしか見えません。 このようなパレスチナとイスラエルの軍事状況を、ラニア王妃の『銃を突きつけて家族全員を殺すのはいけないことだが、砲撃して殺すのは構わないというのだろうか』という言葉に凝縮されているのです。 ・ 『ガザで殺害された子ども3週間で3千人超、世界の紛争の年間死者数上回る 』(2023年10月31日 CNN) ○イスラエルによるパレスチナに対する屋外刑務所 上掲した10月26日のブルームバーグの記事は、また次のように報じています。
国連のグテレス事務総長の『ハマスによる攻撃が理由もなく起きたわけではないことを認識することも重要だ』というのは、パレスチナ・イスラエル情勢の根本は10月7日以前の状況がポイントと言うことです。そして、グテレス事務総長は『56年間にわたり息が詰まるような占領下に置かれてきた』と述べ、10月7日以前の数ヶ月ではなく、半世紀以上が問題なのだと言っているわけです。 以下の7月11日のアラブニュースが報じたイスラエルの占領が、パレスチナを『屋外刑務所』に変えたと国連専門家の指摘した状況が10月7日以前に半世紀以上続いてきたことが、最大のポイントと言うことです。それが常識的な見方です。 ・ 『イスラエルの占領がパレスチナを「屋外刑務所」に変えた、と国連専門家が指摘 』(2023年7月11日 アラブニュース) この記事には以下のように書かれています。私はこの記事を読んで、自分が何も知らなかったととても驚き、とても後悔しました。
そして、この記事にはさらに以下のように書かれています。
パレスチナに対するイスラエルによるアパルトヘイト、『国際法の基本原則に対するこうした天文学的次元の違反』。国連において第三者的にこのような報告がなされているわけです。国連のパレスチナの人権状況に関する国連特別報告者であるフランチェスカ・アルバニーズ(アルバネーゼ)さんは、イタリア人女性です。大変に能力が高い方で大変にまともな感性の持ち主だと私は思います。 以下の10月15日の時事通信も、アルバニーズ(アルバネーゼ)さんがイスラエルについて『「自衛の名の下に、(パレスチナ人に対する)民族浄化に等しいことを正当化しようとしている」と強く警告した』と報じています。 ・ 『「民族浄化に相当」 ガザ侵攻に警告―国連専門家 』(2023年10月15日 時事通信) 民族浄化がキーワードなのですが、この記事には以下のようにあります。短いので全文を載せておきます。
すでにガザ地区のパレスチナ人は、避難という名で100万人以上が家を失っていると言われています。そして、その避難中でも、避難先でも、難民キャンプでも、攻撃されている。ガザ地区北部も攻撃されている。すでに「ナクバ(大惨事)」以上のものが再現されているのです。 ・ 『ガザ避難民、100万人超に 国連「未曽有の大惨事」 』(2023年10月16日 AFP) 『パレスチナ・イスラエル情勢についていかに考えるか その15』(2023年11月4日)へ続く。 | ||||||
このブログへのチップ 0pts. [チップとは] [このブログのチップを見る] [チップをあげる] |
このブログの評価 ★★★★★ [このブログの評価を見る] [この記事を評価する] |
◆この記事へのコメント | |
コメントはありません。 | |
◆この記事へのトラックバック | |
トラックバックはありません。 トラックバックURL https://kuruten.jp/blog/tb/katagiri/489772 |