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正常性バイアス?
[日本の政治]
2020年5月15日 23時37分の記事

昨日の本ブログ「正常性バイアス?」(2020年5月14日)の続きです。

(※ 本記事は掲載から1週間が経つと有料記事になります)

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昨日の本ブログで指摘したように、大学のPCR検査能力について日本政府は本当なら2月中旬前後に調査をしていなくてはならなかったのです。にも拘わらず、それをその3ヶ月後の今に行うわけです。それもまさに国家の浮沈を左右する緊急時がこの3ヶ月ずっと続いているのにもかかわらずにです。その3ヶ月間、何もしなかったわけです。以下の記事を目にしたときに、本当に心から愕然としました。

「大学のPCR検査能力、文科省が調査 山中教授も提言」(2020年5月13日 朝日新聞)

いくら何でも遅すぎますし、結局、ずっとこの3ヶ月間、日本のPCR検査数は世界的に見ても極めて低水準であったわけです。
PCR検査は現状、最も正確で早い方法であって、基本的にこの検査で感染者を見極めているわけです。そして、この検査が少なければ、『感染者』への対応ができないことを論理的に意味しているわけです。そして、このことは、当然、日本政府がこの少なさ故に感染拡大を許したことを意味するのです。日本政府によるクラスター対策だけでは対応できずに、結果として緊急事態宣言発令となったわけです。韓国のように早期のPCR検査と隔離を徹底的に行っていれば、日本も韓国とまったく同じ結果を得ていたと考えます。
しかし、そうしなかったので防疫に失敗、緊急事態宣言発令となり、そのことによって国民の行動制限を行い、そのことによって感染拡大を食い止めようとしたわけです。しかし、この方法は社会・経済・財政における莫大なコストが関わるわけです。最低でも30兆円から40兆円はかかっていると考えます。
また、PCR検査数が少ないことは、感染者への十分な治療やケアがなされてこなかったことを意味します。このことに関しては、検査難民という言葉が生じ、亡くなってから感染が確認されたり、感染確認までに時間がかかりすぎて対応が遅れたケースなどなどが、如実に物語っています。もちろん、これらは報道されていることであって、そうでない事例がかなり沢山あることは容易に想像できます。政府は検査を絞ってきたとはっきりと言っているわけで、それは当然、これらの事象が存在することを明確にしていますが、このような言い訳を言うのを政府が許されるのは、あくまでもやるべき事をやった上、すなわち2月中旬に大学のPCR検査能力についてすでに政府が調査を行っているということが大前提なのです。
しかし、それをやっていないで、PCR検査数を絞ってきたと言っているわけですから、それはいくら何でもおかしすぎるのです。明らかにすでに政府の担当大臣だけではなく、安倍政権そのものの責任問題であることは明白です。
疫病というのは国家の命運を左右する最大の問題の一つです。歴史において、この疫病を契機として民族や国家が衰退、亡びたケースはいくらでもあります。ですので、疫病が発生したのなら、間違いなく有事なのですが、安倍政権・日本政府は、このPCR検査について、この緊急事態にやるべきことをまったくやっていません。PCR検査は世界的にこの新型コロナウイルス防疫政策の要となっているにもかかわらずにです。
本ブログ「国民にあまえるのもいい加減に」(2020年4月2日)では、韓国でのPCR検査体制について、「韓国では1月20日に同国内での初感染者が確認されてからたった1週間後に検査用キットの開発に着手するように韓国政府は動いています。その後2週間の短期間に、大量の検査キットができあがっているわけです。そして、世界的に賞賛された防疫体制を確立して、成果を上げているわけです」と書きました。要するに日韓で雲泥の差となっているのです。
マスクなども2月12日には国民への十分なマスク配布ができると日本政府は約束したにも関わらずできず、4月1日になってようやく首相自ら1世帯2枚のマスクを配布しますと豪語したにもかかわらず、カビが生えていたり、異物が混入していたりして、5月半ばになってもほとんどの世帯は受け取っていないのです。とんでもない低レベルです。
マスクたった2枚でです。それではもっと高度なPCR検査も用意できないのは当然と言えば当然で、安倍政権・日本政府には少し荷が重すぎるというレベルと考えてしまいますが。上述のようにそもそもやるべきことをやっていない体たらく、無責任、お役所仕事なのです。このお役所仕事、明らかに安倍政権・日本政府の失態です。これで、医療体制の充実などが、これからできると考える方が明らかに間違っています。政権だけでも早急に取り替える必要があります。今後の防疫、経済運営を安倍政権でできると考える方が合理性に欠ける思考という状態に明らかになっています。


正義中毒というすり替え
新型コロナウイルスの感染拡大において、当初、武漢から来たものを閉め出すバリケードが中国各地で築かれました。また、フランスなどではアジア人に対する差別が横行しました。このようなことがなぜ起きるかというと、武漢からきたものやアジア人を、自分たちの生命を危険にさらすものとして捉えているからです。そこには生命の危機という絶対的要素があるわけです。このことは極めて切実なことなのです。
実はこれとまったく同じであるのが、自粛警察であるわけです。5月10日の日本テレビ『バンキシャ!』で中野信子さんは、自粛警察は快楽から抜け出せない『正義中毒』と分析をしていましたが、それは間違いなく違うでしょう。自粛警察の根本は基本的に恐怖心です。自分の命を危険にさらすものとして感染者を捉え、そのことに起因する行動なのです。だから、これは中国のバリケード、フランスでのアジア人差別と同じなのです。
さらに言えば、感染収束と反対に行動している人々が、経済の停滞を招き、経済的に自分たちの命(生活)を危険にさらすものとして映るのです。だから、反応するのです。そのような心情は日本だけではなく、世界的なものですし、その根底を快楽追求と分析すれば間違いなく対応を誤り、事態を悪化させるだけでしょう。
自分の命を危険にさらすものということであるのなら、それはヘイトと同じなのです。ヘイトもまたある特定の国や人種に対して生命の危機を感じているわけです。そして、そのような危機を感じているのは、大抵、その社会での弱い存在です。本当は、そのような弱い存在に、すなわち命の危機を感じる立場にさせているのは、その社会の上位なのですが、そもそもその上位には敗北しているので、敵意を向けられずに、他国に対して敵意が向けられるわけです。
ただ、その根本は生命の危機にあるのです。恐怖心。快楽の追求ではないのです。このような意味でヘイトも自粛警察も心理構造は同じなのですが、その違いは、自分の命を危険にさらすものの対象やその現実性や、その行為による結果です。ただ、このような行為は恐怖に基づいているので、反応は激しくなるのです。
このようなものを収めるにはどうすれば良いか? ヘイトに対しては、安倍政権のように中国や韓国に対して強硬に出れば、そのフリをしただけでも、命の危険がさったと勘違いをするわけです。でも、このようにすれば逆効果なのは明らかです。なぜなら、日本が強硬に出て本当に日本人の命の危険が高まる可能性があるからです。全面戦争の可能性もあるわけです。
一方、新型コロナウイルス問題では、日本政府がしっかりと防疫に対応し、成果を収めていれば、それだけ人々の命のリスクは確実に減ります。さらに、そのことによって経済活動もある程度は可能となりますから、必然、経済的にもリスクは減っていきます。そして、この防疫を全国的にできるのは安倍政権・日本政府だけなのです。
しかし、上述のように安倍政権・日本政府はまったく防疫ができていませんし、また何も積極的にやろうとしていません。PCR検査は世界的にこの新型コロナウイルス防疫政策の要ですが、安倍政権はまったく進めていません。したがって、これでは人々が命の危険を感じて恐怖心を際限なく膨らませても仕方がありませんし、同時に自分を守るには自分で動かないといけないという想いにも駆られていきます。この想い、かなり切実と考えますが、その根本原因は、明らかに中野さんが言うような快楽の追求ではまったくありません。むしろ、可哀想な日本人というのが実相と考えます。そして、黒川問題がこのことに拍車をかけています。
韓国のように世界的に賞賛されるような状況になれば、国民はさらに安心感を得、協力的になり、トイレットペーパーなど買いだめ騒動も起きないわけです。要するに行政の優劣によって、これだけの違いが生まれると言うことなのです。


当然、この新型コロナウイルスの感染拡大をもたらしているのは、パチンコに通う人と同じ、むしろそれ以上に安倍政権・日本政府ということになりますし、またなっています。そうなると、これからその政府への極めて深い不信感は相当続くと考えます。東日本大震災において、震災被害では国民は一致しました。しかし、福島第一原発事故では、政権・政府に対して不信感を残し、それがいまだに続いています。今回の新型コロナウイルスでの政府への不信感は、恐らくこの原発事故への不信感の10倍から100倍くらいと考えます。ものすごいものです。普通に考えれば、このすごさは、民主党政権での東日本大震災で民主党が霧消したように、自民党も10年後には確実に霧消しているレベルです。それも2回か3回くらい。
自民党の代わりがいないとも言えますが、現状の安倍政権のレベルでは、いくらでも代わりはできるというレベルです。だから、いずれ相当な激震が生じるでしょう。
革命が起きても、おかしくないレベルです。安倍政権と歩みを一つにするところは、これからものすごい敵意を受けることになると考えます。あとは、やはり霞ヶ関に相当のメスが入る必要性をみせつけています。これも間違いなく生じるでしょう。それを決定的にしたのが、黒川問題なのです。
そして、『正義中毒』という言葉の使われ方は、このような安倍政権・日本政府の犯罪的な体たらくを、国民を悪者にして責任を転嫁する言葉でしかないのです。私は心からそう考えます。ものすごい怒りをともなって。

「正常性バイアス?」(2020年5月16日)へ続く。

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1967年生まれ。東京都出身。中央大学法学部政治学科卒。高校がミッションスクールの聖学院高校で高校・大学時代は聖書研究に没頭。
大学在学中から元航空自衛隊幹部の田村秀昭元参議院議員の秘書、以来、元防衛庁出身の鈴木正孝元参議院議員、元防衛大臣の愛知和男元衆議院議員の秘書、一貫して政界の防衛畑を歩む。
2005年から国民新党選挙対策本部事務局次長、広報部長を歴任。2010年より保守系論壇で政治評論を行う。 yujikatagiri111@yahoo.co.jp
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